山形市の老舗百貨店・大沼 自主再建に踏み出す

2019/06/07 06:26 更新


 山形市の老舗百貨店、大沼は山形店の改装をはじめとする事業再生計画を早期に策定し、自主再建に踏み出す。投資ファンドのマイルストーンターンアラウンドマネジメント(東京、MTM)が18年4月にスポンサーとなったが、資金供給が滞って改装など再生事業が進まず、大沼の従業員らが経営権を取得して新生、大沼として19年3月にスタートした。

(松浦治)

 新経営体制で、赤字の続いていた米沢店を8月15日に閉鎖して経営資源を山形店に集中する。「当面は新たな改装や設備更新の資金が確保できないため、足元の数字固めに集中する」(永瀬孝社長)という。18年度の売上高は山形店が前期比5.9%増で、米沢店の減収分を含めても全社で増収となった。

 引き続き、19年度は上向いている催事の新規企画、地場産品の県外販売による新規事業や外商に力を入れる。催事は2ケタ増収が続いており、爬虫類(はちゅうるい)などを含めたペットやその関連商品、山形の自然をモチーフとしたガラス工芸、地元の日本酒、ワインの限定セットなど従来にない企画を開発する。

 県外販売では食品や工芸品といった特産品を通じて販路開拓する。外商では絵画や高級雑貨だけでない商品も調達し、山形市やサテライト店(新庄)、顧客が多い米沢地域を重点に、売り上げ増に結び付ける。

 半年から1年後をめどに、新たな再生計画を策定し、事業再生に向けた強固な収益体質の確立と抜本的な財務体質の改善を目指す。

永瀬社長に聞く 地元市民の応援が後押し

 3月22日付で社長に就任した永瀬孝氏に再建に向けた方向性を聞いた。

 ――経営体制を刷新した経緯は。

 MTMによる投資で19年3月末に完了する予定だった山形店の改装が全く進んでいなかった。さらに米沢店の改装は1階の一部改装にとどまり、中途半端な状態が続いていた。このままでは業績悪化が加速するのが避けられなかった。

 最も我々の後押しとなったのが顧客をはじめ、市民の応援だった。経営権の取得に先立って、行政、商工会議所、商店街が2月20日に共同で記者会見を開いて「山形から百貨店の灯を消すな」と市民への異例な呼び掛けがあった。地域の支えがあったからこそ踏み切ることができた。

 ――自主再建に切り替えても地方百貨店の生き残りは厳しいことに変わりない。

 早期に新たな事業再生計画を策定し、金融機関など債権者と協議していく。これまでの再生計画は米沢店の存続を前提にしており、白紙に戻して検討している。山形店の1階に食品売り場や飲食ゾーンを新設し、地元生産者と連携した「食」領域を強化する従来の改装計画についても継続するのか、あるいは大幅な修正を加えるのかは検討中だ。

 山形店の改装資金を調達するためにも、事業再生計画を策定し、最低でも2億~3億円の増資を実現したい。

18年度売上高は5.9%増だった山形店


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