山梨県富士吉田市に拠点を構えるオールドマンズテーラーは、市内にオリジナルブランドを販売するショップとカフェを併設したコンセプトショップ「ザディアグラウンド」をスタートし、今秋で10年目になる。同社は直営店を開業する10年ほど前から代表のしむら祐次・とく夫妻が、地元で昔ながらの製法にこだわるリネン製品ブランド「R&D.M.Co-」を企画・生産し、全国の専門店や雑貨店に卸販売してきた、ローカルなファクトリー発信にこだわってきた企業だ。
魅力しっかり伝える
富士吉田は昔から絹織物の産地として栄え、富士山観光の玄関口としても有名な街だ。10年前は同エリアにカフェやライフスタイルショップがなかったため、同社のオリジナルブランドとともに、自分たちのスタイルである英国のアンティークな世界を表現できるようなカフェ併設のショップをオープンした。
建物の2階にカフェがあり、3階でオリジナルブランドを販売する。また、その頃、「東京で開催していた展示会の手法では〝本当にブランドの伝えたいことが理解されているか〟と疑問に思い、自分たちが提案するブランドが好きな人たちにしっかり魅力を伝えるため、展示会を地元の直営店での開催に変えた」(しむら祐次代表)ことも、直営店開設の要因でもあった。
糸からこだわり人気
地元での展示会は、旅行感覚で来場してくれるバイヤーからは、商品はもちろん、毎回工夫を凝らしたVP(ビジュアルプレゼンテーション)など空間作りとカフェでのおもてなしが好評で、現在まで定着している。コロナ下でも中止することなく、人数制限などをしながら継続した。
同店の客層は県外からの来店が9割を占める。コロナ下にインスタグラムなどSNSを強化したことで、新規客の来店も増えた。これは同時期に卸先の要望からECを解禁したことも大きい。潜在的なファンまで購入客層が広がり、コロナ下でも売り上げは右肩上がりとなった。コロナ禍が落ち着いてきた今春夏は観光客も急増し、カフェの利用客が増えたという。
糸からこだわり作り続けるオリジナルブランドは、20年が経過した今でも根強い人気を誇る。こうした人気を支えるのは、安易な事業拡大をすることなく、自分たちが好きな英国トラディショナルなスタイルをぶれずに貫いてきたからだろう。ECで何でも買える時代だからこそ、地元の産地に根差した地方の作り手からの発信によって新たな価値を生み出せるはずだ。