欧州食品安全機関、毛皮動物の脱ケージを勧告 産業規模180億ドルに波及も

2025/08/04 06:27 更新NEW!


 欧州食品安全機関(EFSA)は、毛皮用に飼育される動物の福祉に関する科学的意見書を発表し、「現行のケージ飼育では根本的な改善が困難」として囲い型の飼育方式への転換を提言した。これは欧州委員会の要請を受けて実施された初の包括的評価によるもので、23年に150万筆超の署名を集めた市民請願が背景にある。

 調査対象はミンク、キツネ(アカ・ホッキョク)、チンチラ、アライグマ科動物の5種。意見書は、狭小なケージが探索や遊び、隠れるといった自然行動を阻害し、ストレスや負傷の原因となると指摘。囲い型では空間的余裕に加え、プラットフォームや隠れ場、水場などの設置が求められる。

 国際毛皮連盟(IFF)は前記の市民請願の際、「全面禁止は雇用損失につながる」と懸念を表明し、科学的検証の必要性に言及していた。世界の毛皮産業の規模は約180億ドルに上る。今回の意見書では、囲い型への転換効果を裏付ける十分なデータが現時点で乏しいことも指摘されており、制度設計には移行期間や実証の課題も残る。

 毛皮の是非をめぐっては、すでに欧州20カ国以上が飼育を禁止している。ファッション産業において、持続可能性のみならず、倫理性に向き合う姿勢が問われる。

(パリ=松井孝予通信員)



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