北陸先端科学技術大学院大学の金子教授ら 胃で分解されるナイロンを開発

2021/05/26 06:27 更新


 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学の金子達雄教授らが、動物の胃の消化酵素で分解されるバイオベースナイロンを開発した。従来のナイロンよりも高耐熱、高強度など物性にも優れ、釣り糸や漁網などの置き換えを目指す。

 麹(こうじ)菌などが糖を変換して生産するイタコン酸と、天然のアミノ酸の一種であるロイシンなどを原料とし、ナイロン66の原料に使われるヘキサメチレンジアミンと反応させることで、バイオナイロンの合成に成功した。

 鏡像関係にある一対のアミノ酸を混合すると物性が向上することもわかり、特にL-ロイシンを使って出来たナイロン樹脂は、胃の中の消化酵素であるペプシンによって崩壊し、分子量が低下することも判明した。

 鳥やクジラなどの海洋生物がプラスチックごみを誤飲する問題がクローズアップされるなか、今回開発した新規ナイロンによって事故の軽減につながると期待される。物性面も優れ、ガラス転移温度は100℃を超え、力学強度は85メガパスカルと従来のバイオナイロンを上回った。

 今後、海洋ごみでも被害の多い釣り糸や漁網への応用を目指す。さらには自動車エンジン回りに使用されるナイロン樹脂に適した設計も進める。海洋ごみ対策だけでなく、バイオ由来による二酸化炭素固定化、削減の効果も訴求する。



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