美術家とおばあちゃんが作るファッションブランド「ニシナリヨシオ」が、活動拠点の大阪市西成区で初のファッションショーを開催した。製作に携わる高齢女性や留学生らがモデルを務め、これまでの集大成を披露した。
同ブランドが生まれたきっかけは、大阪市の芸術文化振興事業を請け負う「ブレーカープロジェクト」の事務局(現在は一般社団法人ブレーカーコレクティブ)が、西成区の住民に実施するワークショップで、講師に美術家の西尾美也さんを招いたこと。
西尾さんは装いとコミュニケーションをテーマに、国内外に滞在して住民と作品を製作している。西成区の高齢女性とのワークショップを2年間積み重ね、18年に共同製作によるニシナリヨシオを立ち上げた。
ブランドの生い立ちだけでなく、製作の工程もユニークだ。「身近な人への思いやり」「自分の人生を表す最後の3着」など、西尾さんが女性たちにお題を投げかけ、それぞれが自分のエピソードと重ね合わせて作り上げる。互いのイメージの〝ずれ〟に面白さを見いだし、完成した作品は唯一無二の存在感を放つ。
今回のショーは、ブランドが大阪・関西万博と連動した大阪関西国際芸術祭に参加したのを機に企画した。会場は山王集会所。ステージの中心に裁縫道具を並べた作業台を設け、ウォーキングを終えたモデルが次々に作業台に集い、話しながら裁縫をするという日常の製作風景を再現した。

花瓶をイメージし裾にたくさんの花を飾ったスカートや、両腕に約100パーツの細かな布をパッチワークしたジャケットなど、古着や残布を材料にした服を見せた。
同ブランドのショップ&アトリエも入居する西成区の創造活動拠点「たんす」は週2回オープンし、女性たちのよりどころにもなっている。近年、西成区は外国人の居住も増えている。これを受け、技能実習生や留学生も交えたワークショップを重ねており、将来的にはブランドの共同製作者としてともに活動することを目指している。