《ニュース2024》経産省の繊維産業政策 「繊維ビジョン」の課題に対応

2024/12/30 06:30 更新


経産省の担当課も政策の浸透に力を入れている(繊研新聞社主催セミナーから)

 コロナ禍で繊維・ファッション産業で課題がさらに顕在化し、業界を所管する経済産業省は産業政策を強化している。24年も活発で、業界の最重要課題で、海外を含む社会からの要請でもある環境配慮などのサステイナビリティー対策を中心に新たな方向性と政策を示した。

テーマ絞り提示

 22年5月に今後の繊維産業と政策の方向性を示した「繊維ビジョン」を15年ぶりに策定、その後、ビジョンで示した課題への対応を進めている。ビジョンを策定した産業構造審議会(経産相の諮問機関)製造産業分科会繊維産業小委員会を23年11月に再開し、計7回の会議を経て、24年6月に中間取りまとめを公表した。ビジョンで示した課題の中から、サステイナビリティーや人材確保・取引適正化への対応などにテーマを絞り、施策を提示した。

 その中で、環境配慮に対する取り組みで企業に求められる開示項目と方法を示した「情報開示ガイドライン」と、40年度までの「繊維製品における資源循環ロードマップ」を策定。同委員会での議論を踏まえ、3月に公表した「環境配慮設計ガイドライン」も記載した。情報開示ガイドラインは26年をめどに国内の大手アパレル企業でのガイドラインに沿った情報開示を徹底させ、30年度に国内主要アパレル企業での情報開示率100%を目指す。

 環境配慮設計ガイドラインではリサイクル繊維製品に関する規格を作り、26年度にJIS(日本産業規格)化、27年度にISO(国際標準化機構)化し、ガイドラインに取り組む企業を30年度に国内繊維・アパレル企業の80%にする目標を掲げた。資源循環ロードマップではこれらのガイドラインの目標の記載に加え、30年度に消費者などから手放される衣料品のうち、繊維to繊維リサイクルで5万トンを処理するなどし、「40年度に適量生産・適量消費を達成する」とした。

実習生で4要件

 24年3月には外国人技能実習制度の特定技能1号への繊維業の追加が決定し、業界の要望が実現した。これに伴い、受け入れの要件として通常の項目に加えて、実習生の人権確保や働きやすい環境の整備を求める繊維業向けの4要件が設定された。経産省はその要件の中の「国際的な人権基準の適合」の基準の一つと「JASTI」(仮称)の24年度内の策定を目指す。

 24年は環境配慮をはじめ、これまで以上に踏み込んだ対策を示した。ただし、多くが「野心的な目標」で、業界の大半を占める中小企業にとって負担が大きいなどの課題もある。

 25年は課題を解決し、24年に示した方針をより具体化することや、今後本格化する特定技能実習生の受け入れを円滑にするための体制整備が重点だ。

(繊研新聞本紙24年12月19日付)



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