《ニュース2024》人材不足が続く 採用、離職率低下へ様々な施策

2024/12/30 06:29 更新


1月に開いた「パル・ワンデイオープンカンパニー」

 24年は引き続き専門店やアパレルメーカーの店頭で人材不足が大きな課題になった。企業側の採用意欲は高いものの、応募者が減少している厳しい現実のなか、各社が様々な形で課題解決に取り組んでいる。

〝仕事服〟貸与が好評

 繊研新聞社の「全国専門店アンケート」(24年6月実施)では、25年春の新卒採用(有効回答数68社)の応募者数が「減っている」が前年比5ポイント上昇し、3割強を占めた。「増えている」は10ポイント低下で2割弱。売り手市場が続き、「プレエントリーからエントリー、面接へと進む段階で参加者が減る。エントリーしやすいように工夫しないと」とある人事担当者。少子化で他産業も人材確保が共通課題。ファッション専門店は大手でさえ目標人数未達が続く。

 人材確保のため、給与引き上げはもちろん、福利厚生、子育て支援など待遇を見直す企業は多数に及ぶ。

 トウキョウベースは、初任給を10万円増の40万円に引き上げ、既存社員のベースアップも実施。初任給はあくまで無駄な残業を減らすことを主眼に、固定残業代80時間分を含む。

 ジャヴァコーポレーションは24年春から開始した〝仕事服〟の貸与が好評で、採用へのアピールとしても期待している。雇用形態を問わず販売スタッフ400人近くが活用。年8回、着用したい服を借りられる。

 パルグループは、仕事の楽しさを1日に詰め込んだイベント「パル・ワンデイオープンカンパニー」で手応えを得ている。コロナ禍の休止から再開した24年は4日間で計230人が参加。販売をはじめ、VMD、EC、SNSなど様々な仕事を、現場のスタッフが語るもので、次回(25年1月)はさらに参加者を増やしたい考えだ。

現場で活躍するスタッフが仕事の魅力などを語った(パル・ワンデイオープンカンパニー)

ロープレ受賞者を認定

 離職率を下げるための取り組みも不可欠だ。アーバンリサーチは3年前から社内ロールプレイングコンテストを大幅に変更。審査方法を変え、受賞者をゴールドバッジに認定している。今年からはゴールドバッジチームが様々な店舗に行き、接客指導などを担い、良い刺激になっている。インフルエンサーを目指すための支援体制、バイヤーに同行できるバイヤートライ枠など、スキル向上やステップアップの機会も増やした。

 アダストリアは年1回の社内ロープレ大会「SSC全国選考会」でインセンティブ(報奨)などを充実。アルバイトを含む全販売員に参加資格がある。上位認定者は報奨金のほか、アルバイト向け研修指導など販売以外の業務に関わる資格が得られる。新たなキャリア目標を見つける販売員が増えていて、エリアマネージャーなどに昇格する上位認定者も少なくない。

 販売員の発信力向上を援助し、スター化することでやりがいも拡大している。3月にSNS発信にたけた販売員を全国選抜した部署を設立。動画の作り方や商品・コーディネート紹介の仕方などを指導している。

(繊研新聞本紙24年12月18日付)



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