22年12月末、良品計画が「無印良品」の23年春夏商品の2割を平均25%値上げすると発表した。22年7月には「値上げが簡単に受け入れられる状況にない」と、同一商品、同一価格を継続する考えを表明していた。だが原材料価格の高騰に加えて、22年は円安も急激に進み、値上げ回避は困難になった。
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値上げ忌避目立たず
同社に先立って、ユニクロは22年秋冬から定番商品を10~30%程度値上げし、ユナイテッドアローズも主力ストア業態の2割相当の商品を平均15%程度値上げした。2社に限らず、値上げは各社に広がり、23年春夏、23年秋冬も「商品価値を上げつつ、価格も上げる」ファッション小売りは相次いだ。
23年3月にマスク着用が「個人の判断」となり、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」になった5月以降、実店舗には客足が戻った。ユナイテッドアローズの4~11月の既存店売上高(EC含む)は前年同期比8%増、客単価は8.9%増。懸念されていた値上げ忌避の動きは見られなかった。
低価格業態も不可避
OEM(相手先ブランドによる生産)を担う繊維専門商社や商社繊維部門も、23年の上期業績は堅調だった。22年に比べ円安の進行は穏やかで為替予約などで対応策を取れた。小売りやアパレル企業との商談も「22年は要請が通らなかったが、23年は値上げに応じてもらえる機会が増えた」。
実際、22年は服の価格は前年比で1.5%しか上昇していない。値上げが本格化したのは23年に入ってからだ。23年に小売り各社の売り上げが伸び、値上げが受け入れられたのは、20~22年に抑えられていた購買意欲が一気に活性化したタイミングと重なったためと見ることができる。
23年1~11月は1ドル=140円台と22年よりさらに円安だ。仕入れ価格を可能な限り抑えたい低価格業態も値上げは不可避だ。ワークマンは11月、極端な円安を受け、「業界最安値は死守する」ものの、PBの一部の赤字商品の改廃と値上げに24年7月から着手すると発表した。
「価格交渉が進まない場合は撤退も考える」。商社のOEM部門も円安や生産コスト上昇にこれ以上あらがってまで不採算取引を続ける余裕はない。
新しい価格と価値のバランスを消費者に認めてもらうことに加え、円安をテコに日本以外の市場に活路を見いだす動きが不可欠だ。
(繊研新聞本紙23年12月14日付)
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