《ニュース2023》値上げを巡る攻防㊤ 素材・テキスタイル 原燃料上昇、円安が追い打ち

2023/12/29 06:29 更新


 昨年に続き、素材・テキスタイルのコストアップが続き、大手メーカーが数回にわたって値上げを打ち出した。原燃料価格の上昇に加え、年明けから急速に進んだ円安で海外生産コストや輸入原材料が上昇。一時に比べると値上げへの理解は進んでいるものの、国内の中小製造業者は価格転嫁に苦慮する。

2年で6回の値上げ

 綿花は昨年、大きく上昇したが、今年は比較的安定した。一方、合繊は引き続き高値が続いた。象徴的だったのは東レで、昨年ポリエステル、ナイロンの衣料・工業用長繊維及び短繊維で4回の値上げを実施したが、今年も4月、11月(ポリエステルのみ)の2回値上げした。短期にこれだけの値上げを行うのは過去に例のない事態だ。ロシアのウクライナ侵攻も影響して原油価格が上昇・高止まりし、物流、資材、用役なども上昇、今年は円安が追い打ちをかけた。

 テキスタイルのコスト増も著しい。染色加工などで使用するボイラー燃料の天然ガス、染料・薬剤も上昇・高止まりする。国内テキスタイル産地では、春から大手電力各社による値上げが直撃、特に繊維企業が多く集まる北陸は上昇幅が大きくダメージを受けた。

 コスト上昇を受けて各社は取引先に転嫁を要請し、以前に比べると受け入れられる状況も生まれてきた。染色大手の小松マテーレは決算資料でコストの増減を開示しているが、22年度は原燃料価格が約20億円増加したのに対し、販売価格アップによる転嫁率は39%にとどまった。一方、23年度上期はほぼ100%と進展。しかし過去の未転嫁分は依然、取り戻せていない。

 産地企業の大半を占める中小はより不利な状況に置かれている。

1円も上げられない

 「価格交渉している間に、更にコストアップが進んでいく」「暫定値上げを要請したが難しい」といった声が聞かれ、なかには「1円も値上げを受けてもらえなかった」との悲痛な声も上がる。

 素材・用途によって受注の回復も見られるが、人手不足や限られた生産キャパシティーがネックとなり、受注に応えきれない状況もある。このため各社は、より高付加価値な商品へのシフトを強め、限られた数量で利益率向上を目指す。また賃加工を軸にした受け身のビジネスには限界もあり、製品ブランドの展開、海外市場の開拓といった動きも強まっている。

(繊研新聞本紙23年12月13日付)

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