【ニュース2021⑥】就職難時代が服飾系専門学校生を直撃 企業の経営悪化が新卒採用に影響

2021/12/31 06:29 更新


 ファッション業界の新卒採用は、就職活動をする学生にとって厳しい状況が続いている。コロナ禍による経営の悪化で、21年春卒の新卒採用市場は急速に縮小。例年は多くの企業から求人が集まる服飾系専門学校の大規模校や就職実績の高い中堅校も、就職率50%台や70%前後に落ち込み、20年春卒までの売り手市場から買い手市場に一変した。22年春卒の採用も慎重な姿勢の企業が多く、他業界より企業の採用活動は低調。学生の内定率は21年卒より回復気味ながら、まだ例年より低く、潮目は変わっていない状況だ。

 繊研新聞社が6月に行った全国専門店アンケートによると、今春は採用数が前年より「減った」「凍結した」企業が91社中6割を占め、前回の倍の割合に増加。採用が減った理由は、「コロナ下での業績不振」による「店舗網の縮小」「新規出店停止」「人件費や採用計画の見直し」が多く、「コロナ下で人員が超過」「欲しい人材の定義が変わった」などの回答もあった。

50%台以下が6校

 全国の服飾系専門学校に5月に実施したアンケート(有効回答38)でも、21年春卒の就職率は例年と比べて大幅に低下。過去2年、就職率「90%以上」の学校は80%以上だったが、21年は55%で、就職率「50%台以下」が6校など苦戦した。21年卒と22年卒の就職活動への新型コロナの影響は90%以上が「あった」と回答。「大半のアパレルが採用を中止し、お手上げ状態」「特にパタンナーは求人が少なく、販売員も就業体験の受け入れ企業が大幅に減った」など企業の採用意欲の低下を指摘。6月に行った景況アンケートで、22年春の採用計画数について聞いたところ、回答企業107社のうち20年春の採用実績より「減らした」が47社(約44%)、「凍結した」が17社(約16%)。引きの続き採用を縮小・凍結している企業が6割に上り、採用減少の理由では「組織再編と現社員の最適配置を優先」「新卒採用の凍結と中途採用の実施」「店舗への来客数減少、退店も勘案して」などの回答が目立った。

3月の合同企業説明会も出展企業が減りオンラインに切り替えた事例が目立った

専門職の募集減る

 服飾系専門学校の有力校によると、22年春卒の求人は「前年より件数は多いが、求人総数は減少した」「例年と比べ求人が21年卒では7割減、22年卒では5割減と、前年より回復傾向だが厳しい状況が継続中」という。職種別では企画やパタンナーなど専門職の募集が減り、販売職の求人も大幅に減少し、欠員補充的な採用が多い。半面でEC系の募集が増え、ライバーの内定者も出ている。内定率は12月中旬で「昨年より高いが、50%未満」「昨年は65%だったが、今年は80%」と低調だ。

 多くの学校が「求人が減り、厳選採用になったので、業界や職種を広げて就職先を探すように指導している」「希望の職種や企業にエントリーすらできず、第1志望でなくても妥協する学生が増えている」と話し、内定率は改善傾向ながら厳しい就職戦線が続く。緊急事態宣言解除に伴う通常営業の再開を受け、「採用を凍結していた企業で11月から、企画職と販売職で若干名の募集を始めた事例も複数ある」といい、追加募集に期待して就活を続ける学生も多く、就職難の状況が続いている。

(繊研新聞本紙21年12月27日付)



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