《ニュース2016》インバウンド消費に変化

2016/12/30 06:26 更新


百貨店、売り上げ減も客数増は継続


 16年のインバウンド(訪日外国人)客数は10月に2000万人を突破した。1~11月の累計は前年同期比22・4%増の2200万人で、年間では昨年より400万人多い約2400万人となる見通しだ。訪日客数そのものは伸びているが、消費の仕方はがらりと変わった。昨年の流行語大賞にも選ばれた「爆買い」は収束。消費の主役は時計・宝飾などのラグジュアリー品から、化粧品、食品といった単価の安い消耗品に移った。


3年ぶりにマイナス

 「思った以上に早く鎮静化した」――。高額品需要に支えられ、免税売り上げを拡大してきた百貨店関係者は漏らす。日本百貨店協会が発表している全国百貨店の免税売上高は、今年4月に39カ月ぶりにマイナスとなって以降、11月まで8カ月連続で前年割れした。

 15年の各社の免税売り上げは、消耗品も対象に含むようにした免税制度の拡充と円安を背景に、14年比で3~4倍と大きく伸長しており、16年はもともと大きな伸びは見込みにくかった。そこに急速に進んだ円高・人民元安と中国の輸入関税引き上げが追い打ちをかけ、消費の中心である中国人客が日本で高額品を購入する価格メリットがなくなった。転売目的で買いあさっていた業者も減った。ビザ緩和やLCCの新規就航・増便で、富裕層以外にも訪日客が広がったことも大きい。

 三越銀座店、東急プラザ銀座、福岡三越らが開設した空港型市中免税店は、これまで沖縄など一部の保税特区を除き存在しなかったため関心が高かった。しかし8階ワンフロアすべてを充てて1月にオープンした三越銀座店は、客足がまばらで苦戦しており、見込んでいた初年度150億円の売り上げには届きそうにない。ラグジュアリーブランドが大半だったが、化粧品や食品、土産品を拡大して消費変化への対応を進めている。高島屋新宿店は来春、11階にオープンする予定だ。 


消耗品の先行き不透明

 転換期を迎えたインバウンドだが、百貨店にとって重要であることは揺るがない。免税売り上げのマイナス幅は、当初は20~30%のところが多かったが、月を追うごとに縮小。11月は高島屋が9・2%増と伸ばし、阪急うめだ本店は前年並み、三越伊勢丹や大丸松坂屋は10%程度のマイナスにとどめた。一昨年と比較すると2倍以上の高水準であり、銀座地区の百貨店では全館売り上げの4分の1をインバウンドが占めるほどまで成長した。

 百貨店協会が発表した11月の外国人客数は12・2%増と46カ月連続で増加しており、日本でショッピングする場としての百貨店に対する期待は高い。需要の高い化粧品は20カ月連続で前年を確保した。

 ただ、化粧品などの消耗品の伸びがいつまで続くかは不透明。日用品は一度気に入ればわざわざ日本で買い物しなくても越境ECで購入できる。17年は中国の越境ECに参入し、日本の店舗に来店した中国人との継続的な関係構築や、新客を開拓する動きが広がりそうだ。

三越銀座店が今年1月にオープンした空港型市中免税店
三越銀座店が今年1月にオープンした空港型市中免税店


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