12回にわたって連載中の、架空の百貨店インショップ「ルクリア」の店長、麻紀の成長の物語。副店長の美穂、先輩でスーパーバイザーの瞳、百貨店フロアマネジャーの大谷さんが登場します。
麻紀は前回、ギフト商品は価格もテーマのひとつに入れること学びました。今日麻紀が取り組むのは__
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今日の早番は美穂だ。遅番の麻紀が出勤した。
「おはようございます。大谷マネジャーが麻紀さんに話があるみたいですよ」
「げっ。なんだろう?」
麻紀は、「またダメ出し?」と思いながら事務所へ向かった。大谷マネージャーは、VP(ビジュアルプレゼンテーション)のカラーについての相談があると切り出した。
「中央のエスカレーターからルクリアを挟んで三つのブランドが視界に入るんだ。この3ブランドだけでもカラーを統一したいと思ってね」
今、フロアのメインカラーはネービーだ。そこで本来ならば百貨店の方針に沿ってネービーを出すが、出せないところは各ブランドの方針に従って良いことになっている。ルクリアはネービーの商品がないのでグレーを出し、隣のショップはネービー、もう一方は黒を出していた。
南城百貨店の打ち出すカラーは2週間ごとに変わり、半年前に決まっている。いざ、その計画に合わせてディスプレーを変えようと思っても、商品がないことがある。ない時にはショップ内の統一性を優先して、統一できるカラーに変更して良いという決まりだ。
大谷マネジャーは続けた。
「ルクリアだけを見るとグレーが表面に出ている所が多いから、統一感があってきれいな売り場になっている。隣もきれいに出来ている。でも、三つのショップのカラーを統一できると、エスカレーターの方からも誘引できると思う」
「確かにその方がきれいかもしれないですね」
他店の店長とも話し合い、今回はメインカラーを統一するのは難しいということになったのだが、隣のショップの店長から提案があった。
「3店ともストールを扱っていますよね?VPにストールをかけることにして、その色を統一してみてはどうですか?」
「いいかもしれません。やってみましょうか!」
こうしてそれぞれ、前面のトルソーに赤系のストールを使うことになった。
「大谷マネジャー、チェックをお願いします。なんだかフロア全体が洗練された感じがします」
「よし、それは楽しみだ」
エスカレーターの前から見てみると、ストールの色を統一するだけで結構きれいだ。大谷マネジャーも満足そうだった。
「なるほど。これは良いアイディアだな。他のフロアでも真似させてもらうよ」
VP(ビジュアルプレゼンテーション)など視認性の高い商品の色を統一すると、入店客が増える。理由はきれいな印象を与えるため。そして色を統一することで、商品を構成する要素である「素材感」や「デザイン」など、色以外の情報も伝わるのだ。色以外の情報が伝わると、それに関心を持った人は立ち寄る。統一感を出すのが難しい時は、ストールなどの小物の色を統一することできれいにできるのである。
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※この物語はフィクションです。実際のショップ、人物とは一切関係ありません。
(繊研新聞2013年に販売・リテイリスト支援のぺージに掲載されたものを元に編集しています)