緊急事態宣言に伴う百貨店の対応 全館休業か食品だけ継続かで混乱

2020/04/10 06:29 更新


 緊急事態宣言の発令に伴う百貨店の対応で、政府に対する不信感が表面化した。都心百貨店は4月8日からの全館休業をはじめ、業績に大きな打撃を与える経営判断をしたにもかかわらず、農林水産省や経済産業省から「やりすぎだ」などと疑問の声が上がり、百貨店業界を混乱させた。苦渋の判断に至った百貨店に対する政府の無理解を露呈させた形だ。

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 ことの発端は三越伊勢丹と松屋が7日午後3時までに発表した臨時休業だ。三越伊勢丹は首都圏の6店(新宿、日本橋、銀座、立川、浦和、恵比寿)、松屋は銀座と浅草の2店を8日から全館休業するというもの。この発表に驚いたのは農水省で、「食品売り場まで閉めるのはやりすぎでは」と不快感を示した。監督官庁の経産省は7日夕、日本百貨店協会の関係者らを呼びつけて「食料品の安定的な供給実施を要請した」という。

 百貨店側は三越伊勢丹や松屋だけでなく、大丸松坂屋も都内や大阪、神戸の店舗の臨時休業を決めていた。すでに顧客をはじめ、従業員、取引先に全館休業の周知を始めており、食品売り場だけを営業継続するのは困難だった。一方、高島屋は全館休業に傾いていたが、「経産省からの要請を受けて食品フロアだけを営業する」と臨時休業の内容を急きょ一転した。

 都心部では同一エリアで、食品など一部営業する店舗と全館休業する店舗が混在することになった。百貨店からは「自粛要請の基準がはっきりしない中で、自己判断せざるを得なかった」「食品売り場の営業継続をもっと早く要請してもらいたかった」という声が相次いだ。臨時休業中に食品売り場だけの再開の可能性も残されているが、再調整は難しい状況だ。東京都は商業施設など不特定多数が利用する施設に幅広く休業を要請する考えを示していたが、政府との調整が難しいことから発表を10日に見送った。政府と都の溝が埋まらなかったことも今回の混乱を招いた要因となった。

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