日本製の木製ハンガーを主力とする中田工芸(兵庫県豊岡市)が、付加価値の高いハンガーの需要を海外でも掘り起こそうと奮闘している。大切な洋服をケアする道具として、海外市場の開拓に着手したのは約5年前。コロナ禍はSNSなどを通じた情報発信に力を入れる好機と捉えて訴求を強め、成果がじわじわと表れ始めた。1月末には念願だった英ロンドンでのイベントも実施した。
現在、海外の売上高は全体の5%まで増えた。販売が増えたきっかけは約1年前から協力関係にあるロンドンの洋品ケアグッズメーカー、アータートンとの取り組み。同社のディレクターのウィリアム・ウォン氏は「洋服の日常的なケアと、大切に保管する」という価値観を持ち、中田工芸のパートナーとしては最適だった。
アータートンは中田工芸の自社ブランド「ナカタハンガー」を主力商材として21年秋に販売を開始。SNSやウェブメディアなどを通じた販促効果で英国のテーラーのほか、ドイツや南アフリカにも販売実績ができた。中田工芸への問い合わせも増えて越境ECも伸びた。それまではハンガーを1本ずつ輸送するケースもあったが、今では数量がまとまり、年間で数千本を販売。この2年は海外売上高が倍増ペースで拡大している。
アータートンは1月末に英ロンドンで開いたイベントにも全面的に協力。紳士服テーラーが軒を連ねるサビル・ローのカフェを会場に、有名なテーラーをはじめ業界関係者200人が訪れた。ナカタハンガーの商品展示や制作工程を見せながらクラフトマンシップを訴求し、「これが世界最高峰のハンガー」(ウォン氏)と強調した。
第2部は会場を「オックスフォード・アンド・ケンブリッジ・クラブ」に移し、VIP40人を招待して交流を深めた。「イベントをきっかけにサビル・ローのテーラーなど新規の問い合わせがある」(中田修平社長)として、今後の商談につなげていきたい考えだ。