絹紡糸などシルク紡績を手掛ける中川絹糸(滋賀県長浜市)は、シルク50%・綿50%の国産紡績糸を開発した。良質な綿スライバーの調達ルートと生産設備を構えるとともに、独自技術を生かしてシルク高混率の良質な糸を作る。一般衣料向けに使いやすいよう、ウォッシャブルシルクを活用して日常使いできるインナーウェアや靴下、マスクなど直接肌に触れるアイテム用途に訴求する。現在の生産規模は月産200キログラムと限定的だが、今後は精紡機「ボルテックス」の活用なども見据える。
(小堀真嗣)
開発した糸は、ウォッシャブルシルクと長綿のピマ綿の組み合わせ。ピマ綿は「細繊度で、絡みやすく、シルクと組み合わせて細番手の混紡糸を作るのに最適」(中川嘉隆社長)と考えた。また、海島綿やギザ綿といった高価な超長綿もあるが、一般衣料用途のため汎用性を重視した。
シルクとの混紡は、同社の混紡用スライバー「シルクアジャストスライバー」を生かして形にした。シルクアジャストスライバーは繊維を一定の長さに揃えて連続したスライバーに加工する独自の方法。ネップの発生を抑え、複合する繊維の長さに合わせてシルクの繊維長を決めることができるため、混紡糸の安定生産が可能という。
シルク・コットン糸について中川社長は、かつて絹紡糸最大手のカネボウグループが保有していた綿紡・毛紡の技術・ノウハウを活用して、「シルクとコットンやウールとの混紡糸を積極的に開発していた」という。その中でも、シルク50%・コットン50%の94番手双糸(毛番手)の評価が高く、インナーウェアなどのニットの軽衣料や寝具の側地用途などで需要が拡大。ところが、96年に長野県丸子町(現上田市)本社工場の閉鎖に伴い、生産を終えた。
以前からカネボウのシルク・コットン糸のユーザーから中川絹糸に対し、「復活を望む声があった」という。ところが、綿紡績企業は原料での販売はしておらず、良質な綿スライバーを手に入れる方法がなかった。さらに、「シルクとコットンの繊維長が全く異なり、綿紡績の設備を利用しないと生産が難しい」という課題があり、シルク高混率の糸を作るのは難しかった。そんな中、大手紡績から綿紡績の設備を入手するとともに、同企業から綿スライバーの供給について契約を結び、中川絹糸によるシルク・コットン糸が復活した。