《私のビジネス日記帳》非中央集権的思考 河野秀和

2023/01/18 06:25 更新


 14年の春、「熊本でスタートアップを?」そんな声が多い中、シタテルという会社を熊本の地に創業しました。今でこそ新シリコンアイランドと称され、TSMC(台湾)の誘致やソニーグループの画像センサー工場建設の計画などが相次ぎ、半導体・電子機器を中心にグローバル化が一気に進み、活気があります。

 当時は、スタートアップという言葉は、まだ熊本ではなじみはなく、人、情報、資金面と、全てにおいてビハインドな環境でした。加えて、昨今の起業家のような輝かしい経歴もネットワークも少ない非大卒の私が、美しいスタートを切れるわけもなく、ビジネス初期の表層的な高い評価とは裏腹に、試練はすぐに訪れ「ここで諦めるか、事業を転換するしかない」状態となりました。追い討ちをかけるように16年には大きな震災もあり、まさに背水の陣で生まれたのが今のビジネスでした。

 そんな中、今もなお信頼のおける投資家さんたちから、事業の初期に「ハングリー精神枠」「多様性枠」「地方(分権)枠」など、広い視野で支援をいただけたことや、都心の慌ただしさ、もっともらしさ、雑多な情報の渦などから、少し距離があることで、創業期のアップルやグーグルがガレージで集中してプロダクトを創っていたように、この街が私たちにとっての「ガレージ的位置付け」となり、「場所に依存しない」という分散型の思想や、独自性を毀損(きそん)することなく「使命感」が芽生え、事業の基盤を創れたタイミングだったことは良かったと感じています。

(シタテル社長)

「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。

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