企業や管轄する事業部、周りのサポートは、スタッフが店頭で輝ける、モチベーションアップにつながっている。新入時やキャリア別の研修、自身の努力・勉強も必要だが、日々の運営や取り組み、ケアはスタッフのスキルアップになっている。販売のサポートについて話を聞いた。
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販売員のスキル向上を後押し ロープレ大会で実績も
マッシュスタイルラボは22年秋、販売員のスキル向上のため、レディス営業本部営業推進部にトレーニング課を設置した。トレーナーの蛯名智子さんは自身の販売経験や知識を生かし、希望する販売員に研修をしている。ルミネの接客ロールプレイング大会「ルミネスト」に挑んだ「スタイリング/」の土屋はなさんがゴールドを獲得するなど、取り組みの成果も出てきている。
若手からベテランまで
蛯名さんは他社で販売を経験したのち13年に入社。16年にルミネストでゴールドを獲得後、複数のブランドで店長を経験した。接客の実績と蛯名さんの希望もあって、新ブランドやリクエストがあった店舗の販売員、ロープレ大会を控えた販売員に接客を教えるようになった。
トレーニング課には新卒向けの研修もあるが、蛯名さんは2年以上の経験者に向けた実践トレーニングを担当している。より多くの店舗の人に学んでもらうため、本社や支社に販売員を招き、自然な笑顔や表情の練習、接客時のコーディネート提案、会話の続け方など、課題に合わせたロールプレイング形式で教えている。
「接客スキルが身に着くと、店頭に立つことが本当に楽しくなる」と蛯名さんは話す。販売員から寄せられる声は様々で、「自分自身がECでの買い物に慣れているため、接客の最適が分からない」という若手の悩みや、「後輩に対しての教え方がわからない」というベテランの相談もある。こうした声に寄り添い、毎日店頭で実践できるトレーニングを教えている。
トレーニング課の目標の一つはロープレ大会の受賞者を増やすことだ。「接客が上手なスタッフは多いけれど、ロープレ大会でも評価される人を輩出したい」と蛯名さん。特に力を入れているルミネストは1店につき1人しかエントリーできないため、出場者が決まればブランドを横断したチームを作り、一丸となって大会に挑む。
挑戦のきっかけに
服飾の専門学校時代にルミネストの存在を知り、「配属時からチャレンジすることは決めていた」という土屋さん。スタイリング/の「スタッフ1人ひとりがスタイリストというコンセプト」に共感し、16年に入社した。表参道ヒルズ店で店長を経験した後、20年からルミネ新宿ルミネ1に店長として異動し、念願のルミネストに挑戦することになった。
蛯名さんが作った「ルミネスト参加チーム」に入り、朝晩練習し、接客のアドバイスを受けた。「思うようにいかなくて悔しい時もあったけれど、接客を通じて自分自身に向き合った日々は大人の文化祭のようだった」と振り返る。
21年度でシルバーを受賞し、22年度の再挑戦で、見事ゴールドを受賞した。研修を通じて、「お客様が服を着た時、情景や香りまで想像できるくらいの豊かな表現力を養うこと」を学んだという。「この経験を次世代にも引き継ぎたい」と意気込む。
トレーニング課を設置した効果もあり、23年度のルミネストは過去最多の5人がシルバーに残り、決勝大会を控えている。社内での評判も広がり、蛯名さんの研修を受けたいという販売員も増えている。蛯名さんはトレーナーの増員やリモート研修の導入など、トレーニング課の規模拡大を目指している。
同社はスキル向上以外にも、社員のモチベーションを上げるため、福利厚生やインセンティブ(報奨)制度などを充実させている。社員価格で購入できるものは店頭で着用する服でけでなく、マッシュビューティーラボの化粧品もある。一部のブランドはシーズンごとにプロのメイク講師によるメイクアップレクチャーもあり、社員から好評だ。
指定された資格や語学試験の受験料の支援や、取得後の基本給のベースアップなども行っている。顧客売り上げなど、販売員の実績に応じて、社内総会で表彰、インセンティブを受け取れる制度もある。これらは現場社員に意見を聞きながら、年々環境を整えている。
販売員の魅力は、「お客様との出会いを通じて自分の価値観がひろがること」と蛯名さん。土屋さんは「商品に携わる全ての人の思いをお客様に最後に伝られる」ことにも責任とやりがいを感じている。コミュニケーション能力や精神力など、ファッション以外でも成長できることがたくさんあり、「突き詰めるときりがない」と語る。
(繊研新聞本紙23年9月19日付)