もう40年余り前か、『時代屋の女房』という映画があった。東京の時代屋という骨董(こっとう)店が舞台である。価値の高い商品があるわけではなく、古いミシンなどが店先に並ぶ。その店に、突然猫を抱いた若い女性が現われるシーンからストーリーは始まる。
先日、瀬戸内のある島で小さなドライフラワーの店がオープンした。交通の便が良くないこともあり、来店客は多くない。店主いわく「日がな一日、縁側でドライフラワーを束ねる時も。それでも、あの映画のように、突然思いもかけないお客がやって来るかもしれない。それが楽しいんですよ」とほほ笑む。
花は全て自家栽培、築100年の古民家を活用した店内には昭和の初めから使われてきた食器や家具も並ぶ。「生活も不便な場所。でもとにかく時間がゆっくりと流れていく」。この島全体の人口は減少傾向だが、都会から移住する若い人たちが少しずつ増えてきたという。
時代の変化がすさまじい。最近はあぜんとするような紛争や事件も国内外で増えてきた。様々な技術やAI(人工知能)の進化で生活は豊かになるだろうが、人の幸せはそれだけで測れない。これまでの様々な規範や人と人との関係が、早く、そして大きく変化していくことに、不安を感じる人も多いのだろう。地方に移り住み、新しい生き方を探す若い人たちが増えそうな予感がする。
