10月初旬のある日、都内のセレクトショップで定点観測取材をしていると、開店直後に続々と客が入店してきた。話す言葉からほぼ全員が中華圏からの旅行客とわかる。取材日が中国で人気のあるアウトドアブランドの別注商品の入荷日と重なったようだ。みんなわき目もふらずに、その商品が並ぶ売り場の一角に向かう。
今年も国慶節休暇の旅行で日本が人気らしいが、景気低迷の影響で中国人の財布のひもは固くなっているはず。実際、訪日外国人の購買意欲を測る物差しである百貨店の免税売上高は3月から減少傾向が続く。だが、この店の客は目当ての商品を手に取ると逡巡(しゅんじゅん)もせず、レジに向かう。
販売員に聞くと、中国でもそのブランドは買えるが、今回別注した商品の中に現地では販売していないデザインのバックパックがあるという。それをSNSの告知で知った中国人客が日本に行く機会に手に入れようと店に詰めかけたのだろう、とのことだった。
開店から30分もすると、日本限定のバックパックは売り切れた。後から来た中国人客は目当ての商品が完売したと知ると、売り場に残っている他の別注アイテムには目もくれず、店を出ていった。節約志向が強まり、消費のダウングレードが進んでいるだけでなく、中国では欲しいモノだけ買う選別購買傾向もかなり高くなっているようだ。