国内の縫製工場を取材する機会が多い。中小規模の工場経営者からは「人材確保・育成が難しい」という声を以前からよく聞く。地方は人口減・少子高齢化が急速に進んでおり、地元高校を卒業した若い世代などの新卒採用をあきらめ、外国人の技能実習生に頼らざるを得ない状況が続いている。
新入社員を採用できたとしても「現場に新人を育てる余裕がない。工場としても人材教育に投資できず、ミスマッチが生じて短期間で離職するケースもある」という。新人側も「教えてもらいたいが忙しそうで遠慮してしまう」「先輩の手を止めてしまうので申し訳ない」などの思いが強く、技術の習得が遅れる悪循環を招いてしまう。
こうした縫製工場の課題解決に向けた取り組みが始まっている。サンプル縫製のチドを運営する小林智一代表と、縫製とプリーツ加工を行う生田プリーツの生田貴之社長が中心となり、「S.I.C縫製学校」を今春、東京で本格始動した。生徒は13人。首都圏だけでなく茨城や群馬、長野など遠方から通う生徒もいる。
同校では「技術力の向上はもちろん、新人の指導の仕方や縫製ラインのレイアウト制作、生産性向上策なども学んでほしい」と考える。さらに「将来的には縫製技術者が活躍できる場を広げたい」と強調する。服作りの未来を担う人材育成を応援したい。