《めてみみ》上善は水の如し

2025/05/08 06:24 更新


 ベトナム戦争終結50年を祝う大規模な式典が先月30日、ベトナム・ホーチミン市で開かれた。米国が支援していた南ベトナムを北ベトナム軍が倒し、20年にわたる戦争が終結。焦土と化したベトナムは、社会主義体制を維持しながら市場経済を導入し、東南アジアの中でも高い成長率を誇る国になった。

 トランプ関税に世界が翻弄される。一時停止している相互関税でやり玉に挙がるのが東南アジアの国々。中でもベトナム、ミャンマー、カンボジアは40%を超え、影響が懸念される。ベトナムの最大の輸出先は米国で全体の3割を占める。両国は95年に国交回復。30年かけて築いてきたものがすぐに崩れてしまうのだろうか。

 中国の最大の貿易相手国も米国だ。世界の潮流はそうたやすくは変わらない。しかし時間をかけながらも徐々には変わっていくだろう。

 米国への対応として『老子』の中にある「上善は水の如し」が参考になると考える。最高の善は水のようなもの。水は万物に利益を与えながらも他と争わず器に従って形を変え、自らは低い位置に身を置く。トランプ氏とは対極の考えに映る。米国以外の国々が協調し、水のように柔軟に対応できれば影響は大きくても世界経済は成り立つと信じたい。そのうち、何事もなかったような顔で米国が加わってきても、きっと静かに溶け込むだろう。



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