先日、映画監督の河瀬直美さんによる大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「ダイアローグシアター・いのちのあかし」の概要発表があった。提供するのは「初めて出会う二人が対話する」ことだ。事前に募集し育成を進めている「対話者」の一人と、当日の来場者から選出された一人が、ある問いかけについて観客の前で台本なしで対話する。
「最近、あなたは何色ですか?」「これまでの人生でいちばん重要な決断はなんでしたか?」など問いかけは184種類あり毎日変わる。対話とは互いの立場や意見の違いを理解し、そのズレを擦り合わせること。その実現のために「本人にも、見る人にも新たな発見や気づきを与えることができる」対話者を育成中だ。
背景にあるのは、戦争や紛争など立場の違いによる「分断」や「対立」が広がっていること。好みの情報に囲まれるフィルターバブルや、価値観の似た者同士が交流・共感しあうエコーチェンバー現象も分断を助長していると言われる。主張や交渉でもなく、対話によって様々な分断の溝が少しでも埋まるきっかけになればというのが、ダイアローグシアターの狙いだ。
企業においても、部署間や上下関係などで分断や溝を感じている人は少なくないだろう。それを解決に導く手段は互いに歩みよる「対話」を続けることではないだろうか。