《めてみみ》世界で成功する確率

2025/02/04 06:24 更新NEW!


 「獺祭(だっさい)」を製造販売する旭酒造は6月1日に社名を獺祭に変更する。海外での販売をさらに伸ばすためには、製造する商品の銘柄と社名を一致させたほうが、グローバルでのブランディングに効果があると判断したという。

 厳しい価格競争の中で経営難に陥っていた旭酒造が生き残りを賭けて開発したのが獺祭だ。酒米を元の50%以下まで磨く純米大吟醸の酒造りは難易度が高かったが、杜氏の経験ではなく数値データを基に厳密な温度管理で四季醸造するなど、常識にとらわれない生産の仕組みを確立し商品化にこぎつけた。

 90年に販売を開始すると問屋を介さず小売店への直販で全国に販売網を広げ、日本国内の市場を開拓した。05年からは輸出にも乗り出した。10年前に取材した際、当時社長だった桜井博志会長は海外市場に目を向けた理由を「国内で競合とシェアを争うより、世界に出るほうが成功する確率が高い」と説明していた。

 獺祭の売上高は05年の4億円から24年は195億円まで拡大し、輸出比率も5%から45%に上昇した。社名変更を機に国内300億円、海外700億円まで売上高を伸ばすという。「地元商圏だけでは生き残れない」状況が世界に通用する商品を生みだした。現状に悲観せず危機感をバネにすれば、大手でなくても飛躍を目指せる日本の企業が他にもあると思う。



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