商社は変化対応業。不透明さが増す世界情勢を大手総合商社トップはどう捉えるのか。年頭のあいさつから探る。
共通する懸念は保護主義・自国第一主義の強まりによるサプライチェーンの変容。三菱商事の中西勝也社長は、米中貿易対立激化の影響が他国にも広がり、保護主義的な通商政策に移行することで「今後更なるサプライチェーン上の変化も見られるでしょう」と示唆した。ただ、伊藤忠商事の石井敬太社長は、米国大統領の任期が4年であることを指摘し、中長期の事業や投資では「過剰に反応せず、本質を考える冷静な視点も必要」と話す。
注目はAI(人工知能)の進化。石井社長は先端分野に加え、既存分野でも「デジタルやAIを組み込んでいないものは世界市場から脱落する可能性すらある。この潮流に追いつかないと次の新たなビジネスのきっかけすらつかめなくなる」と活用を強める。中西社長はAIの進化が「社会・経済のあり方に革新的なインパクトをもたらす。異業種プレーヤーによる既存産業の〝ディスラプション〟(崩壊)が急速に進んでいる」と注視する。
リスク管理の重要性も共通だ。三井物産の堀健一社長は不透明な環境に対し「常に感度を高く保ち、高度なリスク管理を継続する」と述べた。各社とも情勢変化をチャンスに変え、強みを生かして更なる成長を狙う。