25年3月に開業する新広島駅ビルの商業施設ミナモアは「〝人〟と〝街〟を徹底的に知ることから生まれた〝広島ならでは〟のSC」をうたう。インタビューやイノベーターへの密着取材に加えて、エスノグラフィー(民族誌学)の手法を取り入れるなど定性調査を重視し、施設コンセプトを固めた。
エスノグラフィーは対象となる人物や民族の行動や文化、風習などを観察・記録して特性をひも解く調査方法で、文化人類学や社会学などで使われることが多い。コロナ禍で対象者に会いにくかったため、日記を書いてもらい分析した。「全館カフェ」「日常の中の冒険」「ギフトの殿堂」というキーワードがそこから生まれた。
SC開発は、商圏人口や年齢構成、世帯所得、駅の乗降客数、競合する商業施設の分析など定量データの分析が基本になる。そこから営業面積や店舗数、売上高予測、適正な業種比率などを導き出す。開発全盛期の施設はそんな手法が主流だったように思う。結果、似たようなテナント構成のSCが各地に生まれた。
当時、よく聞いたのが競合施設ができれば売り上げが減少する「パイの奪いあい」。定量データは基本だが、それだけでは潜在需要は見えず、新たな需要創出は難しい。定性調査などで市場を深掘りすることで、他施設と差異化された「ならでは」のSCが生まれるはずだ。