商社のアパレルOEM(相手先ブランドによる生産)事業の上期業績は想定よりも堅調だった。リベンジ消費の一巡、夏の長期化による秋冬物の落ち込み、為替変動など外部環境は決して良くなかったが、特に利益面で「何とか踏ん張った」企業が目立つ。
1ドルが140円台から160円台まで大きく動く中でも一定の利益を確保できている。以前はそうはいかなかった。ここまで円安が進むと、輸入品が大半を占めるアパレルOEMで黒字を確保することは困難だったはずだ。
円の戦後最高値は11年10月末の1ドル=75円32銭。その頃と比べると半値に落ち込んでしまった。当時のOEM事業はかつてないほどの利益だったが、円高にあぐらをかかず、生産地を中国から東南アジアに移し、粗利益の向上と「自社ならではの強み」の発揮を目指した。原料・生地から差別化して製品までの一貫体制を構築、不採算事業から撤退し収益体質を強めてきた。以前と比べて「値上げをのんでもらえるようになった」ことも大きい。
しかしデジタル技術の活用を含め、製品企画や物作りの面で大きなイノベーションが起こったかといえばまだこれからだろう。商品自体はそれほど変わってはいない。「買いたい」「欲しい」と消費者に思ってもらえる服、商材とは何か。それをどう生み出すのか。その追求はまだ道半ばだ。