京都の観光名所の一つに「哲学の道」がある。銀閣寺から南禅寺を結ぶ、琵琶湖疎水沿いの約2キロの遊歩道だ。春の桜並木が圧巻だが、新緑、紅葉、時には雪景色と移り変わる景色を年中楽しめる。
道中には、わらぶきの山門と庭園が美しい法然院、もみじが有名な永観堂、住友家所蔵の美術品を展示する泉屋博古館などのスポットがあり、小さな土産物店、カフェなども点在していて飽きない。
哲学の道という一風変わった名前は哲学者の西田幾多郎や田辺元に由来し、戦後、地元住民の保存運動で名付けられた。京都帝国大学教授だった西田は毎朝この道を散歩しながら思索にふけり、西洋哲学を乗り越えようと腐心した。
研究室にこもるのではなく散歩しながら哲学を深めた西田の行動は、現代の脳科学ではデフォルトモードネットワークという言葉で説明される。無目的でぼーっとしている時間に働く神経回路で、脳を休ませることで記憶の整理などが行われるという。入浴中やトイレの中などでノーベル賞級のアイデアがひらめいたといったエピソードもこうした働きだろう。
世界情勢や為替動向に加えてビジネスの創出や事業の立て直し、新しいクリエイションなどなど、仕事の悩みの種はつきない。さわやかな秋風が吹いてきた今日この頃。たまには心を空っぽにして外に出かけるのもいい。