《めてみみ》リーダーの資質

2024/02/21 06:24 更新


 『貞観政要』という古書がある。中国・唐王朝の第2代皇帝だった太宗の言行をまとめたものだ。太宗が率いた貞観の時代は、長い中国の歴史の中でも平和で安定した時代と言われる。貞観政要は、帝王学の教科書とされ、後世の中国の皇帝はもちろん、徳川家康をはじめ日本のリーダーたちも愛読した。

 書は、太宗と彼を支えた重臣たちとの会話形式。内容は多岐にわたるが、創業者である先代と2代目の自分を比較し、「創業」と「守成」、どちらが難しいかを、太宗が臣下に問うたエピソードなどが有名だ。もちろん、太宗がいかに名君だったかという話が主だが、部下の諫言(かんげん)や直言を素直に聞く太宗のリーダー像が伝わってくる。

 最近、繊維産地の中小企業を回っていると、社長交代の話題を耳にする機会が増えた感がする。戦後しばらくして創業した企業なら、ちょうど3代目くらいに代わる時期である。加えて、コロナ禍で一変した経営環境を受け、新しい感覚を持った人たちに早めにバトンを渡そうという思いも強くなってきたようだ。

 大きな時代の転換期。成長が難しくなるなか、創業よりも守成の方が難しいか。バトンタッチの中で紆余(うよ)曲折もあるだろう。ただ、意見を取り上げるか否かは別にして、多種多様な意見や諫言を素直に聞く姿勢は、時代が変わろうともリーダーに不可欠な資質である。



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