00年代以降に話題になった言葉に〝ガラパゴス化〟がある。日本独自のスタンダードに固執した結果、世界の潮流に取り残され、淘汰(とうた)される現象を指す。その象徴がガラケー(ガラパゴス・ケータイ)だ。国内市場で開発競争を繰り広げたが、スマートフォン時代に入って海外製品が圧倒し、ガラケーとともに日本のメーカーは存在が薄れた。
アパレル業界では消費者の好みが多様で寡占化しにくいからか、00年代に日本市場参入が話題になった海外SPA(製造小売業)が席巻する事態にはなっていない。ただし、アパレル業界にもISO(国際標準化機構)のような世界のルールブックは存在する。環境規制や人権デューデリジェンスなどの動向にも気を配っておかなければ市場から排除される可能性はある。
一方、ガラパゴス化が全て悪いわけではない。昨年、海外を訪れた際にふと気付いたが、現地の菓子の小袋が手ですっと割けないのにイライラし、日本のフィルム包装がいかに配慮して作られているかを思い知った。
これはほんの一例で、あらゆる製品にこうした気配りがなされているはずだが、問題は価格だ。消費者に配慮した高い品質が対価に反映されなければただの器用貧乏になってしまう。コロナ禍前を上回ったインバウンド(訪日外国人)の増加はガラパゴスの価値を発見してもらう機会でもある。