3年前の今日、東京・新国立競技場は世界中から訪れた6万人の観客がスタンドを埋め尽くしていた。平和の祭典の開幕が高らかに宣言され、会場は高揚感に包まれた――はずだった。結果は周知の通り。コロナ禍が直撃して1年延期、ほぼ無観客の静かな五輪・パラリンピックとなった。
パンデミック(世界的大流行)は国際的なビッグイベントの開催には不運な事態だったが、熱狂にひたらず、冷静に物事を見るには良い機会だったのかもしれない。女性蔑視発言による組織委員会会長の辞任、計画より大きく膨らんだ大会経費、整備施設のその後の活用、スポンサーの贈収賄と、負の遺産を含め様々な問題を浮き彫りにした。
期せずして社会が大きく変わった部分もある。政府や東京都は大会期間中の首都圏の交通の混雑を想定し、テレワーク実施をかねて企業らに要請していた。17年から毎年7月には「テレワーク・デイズ」を開いて準備してきたが、コロナ禍で半ば強制的に普及した。予定通り五輪が開かれていた場合、閉会後もテレワークは定着しただろうか。
2年後には大阪で万博が開催される。前回の東京五輪(64年)、大阪万博(70年)は高度経済成長期の日本の勢いを象徴する出来事として語られることが多いが、21世紀の五輪・万博は後の世代にどう語られていくだろうか。