《めてみみ》生産する場がない

2023/04/10 06:24 更新


 国内への生産回帰の流れがやむことはなく、縫製工場はどこもフル稼働が続く。大手企業に割り込まれて後回しにされた中小ブランドは納期遅れを心配し、発注を前倒しするところも目立つ。今まで取引していた工場に断られ、「生産する場がない」と嘆くデザイナーの声もよく聞く。

 この傾向は国内にとどまらない。中国やASEAN(東南アジア諸国連合)などにアパレル工場を持つ企業で組織する「アジア・アパレルものづくりネットワーク」(AAP)でも来年3月まで生産ラインが埋まっているという企業も多い。一方、ベトナムやカンボジアでは欧米向けの受注が激減し、中国系工場などの倒産が増えているという。

 受注数量だけ見れば、国内外とも縫製工場はプチバブル状態と言える。ただし、いつまで続くかは疑問だ。生産現場は低賃金、恒常的な人手不足など課題が山積み。厳しかったコロナ下の長いトンネルをようやく抜けた今こそ、気を引き締めて足元を固める必要がある。

 AAPが3月中旬に東京で開催した展示会では、「未来を見据え、新たな取り組み先の開拓が不可欠」と強調していた。素材や副資材メーカーと連携した技術・開発力など自社の強みを理解してもらい、一緒に継続した物作りができる取引先とパートナーシップが組めるかどうかが重要になるだろう。



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