インディテックスがロシアから撤退する。中東の小売り・不動産企業と事業売却の合意に達した。事業移管には当局の承認が必要なため、ウクライナ侵攻後の3月に店舗とECの営業を停止して以降、売却に向けて動いていたと考えるのが妥当だろう。
撤退後の店舗には売却先企業の運営するブランドが入り、従業員の雇用も相当数が維持される。ロシアだけでなくウクライナの商売も止まっているが、欧米市場が好調で2~7月は増収増益、コロナ禍前水準も上回った。
撤退にかかるコストも好業績の上期に計上した引当金でカバーできる見通しだ。同じくロシア撤退を7月に決めたH&Mが経費増大の影響で6~8月に大幅減益となったのと比べ、鮮やかな引き際と言える。
何より目を引くのは、いったん事業を終了するものの、情勢が今後変化し、もし事業を再開できるめどが立った場合は、売却先の企業とフランチャイズ契約を結んで再進出できるオプションも残している点だ。
戦争が長期化し、世界各国からの批判も厳しさを増す一方だが、国際情勢がこの先、どう変わるかなど誰にもわからない。ユニクロもロシアで50店の営業を停止したままだ。人道的な見地からの判断も大事だが、未来の成長につながる選択肢を用意しておくこともグローバル競争を勝ち抜くために重要だと思う。