SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標の1番目に掲げられているのが「貧困をなくそう」。貧困を抜け出す一つの手立てとして期待されるのが小規模な融資や貯蓄、保険、送金などの金融サービスを提供するマイクロファイナンスだ。
その代表的存在であるグラミン銀行は83年、バングラデシュの経済学者、ムハマド・ユヌス博士によって創設された。ユヌス氏はノーベル平和賞を受賞した。
そのユヌス氏がバングラデシュの首席顧問として来日している。同国では昨年8月の学生を中心とした大規模抗議活動で長年首相を務めていたハシナ氏が退陣、国外逃亡した。その後の暫定政権を率いるのがユヌス氏だ。
バングラデシュからの衣類輸入は、この混乱などで昨年は前年実績(数量ベース)をやや下回ったが今年1~3月は11%増と伸びている。「国内の治安は以前と同水準に戻っている」と駐在員は話す。安価で豊富な労働力を背景に日本企業の進出はこの10年で約3倍だ。しかし、成長に伴い26年にはLDC(後発開発途上国)から卒業し、関税ゼロなどの優遇措置がなくなる。
日本と同国はEPA(経済連携協定)締結に向け交渉を重ねている。ユヌス氏は今回、石破総理と会談する。進展が期待されるが、安さの追求には限界がある。LDC卒業を機に付加価値化を進めることが今後必要になる。