《視点》買える幸せ、買えない価値

2025/05/30 06:23 更新


 マクドナルドが販売した、ちいかわのおもちゃ付きハッピーセットが転売目的で大量購入され、社会問題に発展した。最終的に早期販売終了という形で幕を閉じた。ネット上では「転売ヤー」と呼ばれる人たちに対し非難の声が殺到した。ハッピーセットが本来、子供向け商品であることを思えば、そうした批判ももっともだろう。

 そんなニュースを見た数日後、家族でショッピングモールに出かけた時、ある衣料品チェーンが有名ブランドと協業した新商品を販売していた。前回の販売時には即完売品も多く、転売もあったようだ。「まだ残っているかな」と家族は少し心配そうに店頭へ向かったが、在庫は豊富で、店頭でもECでも購入できそうだった。期待と緊張の面持ちで駆け込んだ家族はどこか拍子抜けした表情。その顔には、「急ぐほどでもなかったな」という複雑な思いがにじんでいた。

 売れすぎれば転売問題がつきまとい、買いやすくなれば今度はレア感が失われる――。消費者心理の難しさが垣間見えた。企業とブランドの協業は熱狂と失望の狭間で常にバランスが問われている。

(森)



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