日本人の平均年収はリーマンショックの08年を境に400万円台後半から減って、09年から今に至るまで400万円台前半で推移している。給料が増えなくてもなんとか生活はできた。円高だったからだ。
08~13年の為替レートは1ドル=100円以下に収まっていた。アベノミクスの始まった14年から円安に転じたが、それでも15年の120円台をピークに20年までは110円前後だった。
22年に入って急激に円安が進み、9月に140円を突破したことで、収入が増えない家計を円高が救うという図式は崩れた。12年が1ドル=86円だったとして計算すると、現在の年収400万円は多く見積もっても10年前の6割分の価値しかない。
ほとんどの物資を輸入に頼る日本で、円安はありとあらゆるものの値段を容赦なく押し上げる。食費や光熱費など生活に必要なコストの抑制には限界がある。したがって服に使うお金を切り詰める生活者は増える。今秋冬は服の値上げも相次ぐが、それが受け入れられる可能性は低いだろう。
業界全体が停滞しても、全ての企業の業績が落ち込むわけではない。過去の服が売れなかった時期も、客が服に求める価値や機能は何なのかを見極めて提供し、不況下でも成長を遂げた企業は一定数存在した。状況は最悪だが、やれることはある。そう思うしかない。