14年に環境問題と社会問題を考えるシンポジウムを取材した。サステイナビリティー(持続可能性)やエシカル(倫理的)といった言葉がまだ浸透していなかったころだ。
登壇者の一人で、オーガニックコットンの普及に取り組んでいた商社マンの話が印象に残っている。以前は人件費の安い工場を探し、徹底的にコストを削りながら1円でも安い服を作る、そんな仕事をしていたそうだ。
オーガニックコットンに携わって一番変わったことは、「自分の子供に仕事について話すようになったこと」という。子供もコスト削減に成功した話よりも、四苦八苦しながらもオーガニックコットンを普及させようとする話の方が興味を持っただろう。
シンポジウムから8年。人も自然も酷使しながら安く物を作るビジネスモデルが限界に近づいていることに多くの企業や消費者が気づき始めた。オーガニックをはじめとするサステイナブルな素材の普及や、物作り上の人権問題は、ビジネスにおける優先課題となった。
「地球は祖先からの贈り物ではない。子供たちからの預かり物だ」というネイティブアメリカンの教えがある。持続可能性とは何かと難しく考えてしまいがちだが、子供に胸を張れる仕事か、未来の子供に残せるビジネスモデルか、という視点は一つのヒントになりそうだ。