欲しいモノがあってもピッタリくるものがなければ「買わずに作ればいい」という声が目立つ。今に始まったことではないが、DIYのインテリア用品やハンドメイドのアクセサリーをプライベートで愛用するだけにとどまらず、自ら作ったモノをECなどで販売することも珍しくなくなった。
この間、首都圏の工場や職人を取材した際にも同様の消費動向の変化を感じた。あるメンズバッグブランドは今春、東京の下町に開設した直営店に工房を併設した。顧客からの要望があり、ワークショップや物作り教室を開催するという。ファッション業界でも個人や小規模事業者によるDtoC(メーカー直販)ブランドが急増している。
コロナ禍で苦戦を強いられるスーツ市場でも、大量生産の既製品に比べるとオーダーメイドの業界の方が落ち込みは小さい。どうせ購入するなら、サイズはもちろん、素材やデザインなど自分好みにカスタマイズできる方が満足度は高いと思われる。
「自ら作りたい」という消費動向の変化には、作り過ぎて市場にモノがあふれかえり、同質化と廃棄問題も背景にあるのだろう。物作りの難しさや楽しさを体験することで、既存のブランドや商品でも価値を見直したり、再発見したりすることにつながるはず。記者も地元の教室に入って革製品などを作ってみたい。