《めてみみ》再生の道

2021/03/02 06:24 更新


 三越伊勢丹ホールディングスは4月1日付で杉江俊彦社長が退任し、新社長に細谷敏幸岩田屋三越社長が昇格する人事を発表した。今期(21年3月期)の最終損益は450億円の赤字を見込み、コロナ禍で百貨店の存在価値が問われる最中だけに、トップ交代に社内外から驚きの声が広がった。

 17年4月に就任した杉江社長が最優先課題としたのは、低迷する百貨店事業の立て直しとデジタルや不動産などの新規事業の足場作り。不採算の店舗の閉鎖や事業の撤退、人件費などの経費削減などのリストラを断行してきた。コスト構造改革は「一定のメドがついた」(杉江社長)という。

 成長戦略のデジタルや不動産は道半ば。デジタル化は品揃え、接客、販売の商売の全てでオンラインとオフラインのシームレス化を推進した。店頭、ネットでの複数の選択肢を提供し、顧客との関係性を深める狙いだ。ECの20年度売上高は300億円を上回る見通しだが、店舗に並ぶ利益を稼ぐには程遠い。不動産も今期の営業利益が55億円(前期比8%減)にとどまる。

 新経営体制で5月に公表する新中期経営計画はデジタル化の方向性に変わりなく、さらに加速する。百貨店の一本足だった事業構造の見直しは喫緊の課題だ。ただ、百貨店の一番の強みである顧客基盤を最大限に生かす以外に再生の道はない。



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