《めてみみ》季節を愛(め)でる

2021/01/15 06:24 更新


 正月明けの1月7日には七草粥(がゆ)を食べる風習がある。地域によっては小正月と呼ばれる今日、食べるところもあるようだ。1年の豊作と無病息災を願う行事だけに、今年は例年に比べて食べた人も多かったであろう。日本人は季節のめで方・愛し方に長じている。春には桜を、秋には満月や虫の音で季節を感じる。四季の移り変わりを、様々な自然の事象とともにめでてきた。

 海外ではどうであろうか。この時期にフランスを訪れると、ガレット・デ・ロワという菓子を目にする。王様の菓子を意味するこの菓子はケーキとともに紙でできた王冠が入っており、カトリックの公現祭の時期に食べる風習がある。切り分けたケーキの中に人形が入っていた人が、その1日、王様になれる。1月のパリでは家族や友人同士が集まって、ガレット・デ・ロワを楽しむ光景が見られる。

 今年の1月は、パリにいたとしてもそんな光景を見ることも難しい。パリのカフェやレストランは現在、営業しておらず、人々は家庭内で静かに王様を決めるしかない。パリの友人たちはストレスを感じながら、新年を楽しんでいる。

 年明けから早くも半月を終えようとしている。季節は確実に移り変わる。しばらくはいろんなことを我慢して工夫しながら、世界の人たちとともに新しい季節をめでたい。



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