百貨店の店頭販売は3~4割減を強いられている。新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、都心の一等地はかつてのにぎわいとは程遠い一方で、広い公園や海岸など密になりにくい場所は人出が多い。高齢者を中心に外出を控える消費行動が続く。この傾向は当面、変わらないだろう。
モノを売るためには人を集めることが大前提だった小売業は手も足も出ない状況だ。対照的に、オンライン販売は「緊急事態宣言による休業が明けた6月からEC売り上げが50%増で推移している」(三越伊勢丹)と急拡大が続く。大手百貨店では「ECでモノを売れ」と大号令が掛かっている。
投資は店舗を後回しにして、IT関連に集中する流れ。こうした状況を目にするたびに今さら、何を売るのだろうと思ってしまう。百貨店が扱う商品は消化仕入れが売上高の7~8割に達する。ほとんどの取引先が直営店をはじめ、自社サイトでの販売を手掛ける。ECで利益を出している百貨店は、ほとんどないのが現状だ。
EC後発組が大手専業に競り勝つのは、商品領域を絞り込んで顧客サービスを向上させたとしても至難の技。どのようにして経費をかけずに、配送のほか、再販など返品処理を短縮できるかが大事だ。売上高だけでなく、関連経費や商品回転率、最終利益率などが事業の成否を左右する。