政府の需要喚起策「Go Toキャンペーン」の混乱が広がっている。飲食業を対象にした「Go Toイート」ではポイント相当額を大幅に下回る額を故意に利用して「差額」を得る客が続出。農林水産省は慌てて、ポイント利用下限額を設けるよう飲食業者に要請した。観光需要喚起を目的とした「Go Toトラベル」では国から配分された予算が不足してきたため、割引上限額を引き下げる大手旅行サイトが相次いだ。国土交通省は10月13日、事業者への予算を追加配分すると発表した。
こうした事態を国は想定していたのだろうか。していたとしても、制度設計があまりにも不備だ。国が拙速に進めてきたツケを早くも事業者と消費者が払わされている。
同キャンペーンは内閣府の統括の下、経済産業省が予算と事業全体を管理し、担当省庁に事業を振り分ける枠組みだった。ところが、予算成立後に経産省の「持続化給付金」の事務局委託を巡る不透明な取引が問題となり、所管省庁と事務局が事業ごとに完全に分けられた。急な路線変更が制度の不備を招いたとも言える。
経産省は来年度予算の概算要求で、額を明記しない「事項要求」の中にコロナ禍を踏まえた「需要喚起策」を盛り込んだ。年末の予算案編成に向けて関連業界とも十分に議論し、不備がない制度設計にしてほしい。