「今は暮らしを取り戻す段階」(エイチ・ツー・オーリテイリング)にある。5月中・下旬から多くの地域で商業施設が全館営業再開となった。百貨店で売れている商品を聞くと、化粧品のまとめ買い、ベビー・子供服、リビング用品といった生活必需品や各種ギフトが目立つ。想定以上の売り上げと話す百貨店もあった。
この消費を〝自粛反動〟とする見方もあるが、違う側面でも捉えられる。自宅マンションのゴミ収集場には、連休期間などにはかなりの量が積み上がっていた。外出自粛や在宅勤務が続いた約2カ月で、家財道具を整理・処分した人は多いだろう。
百貨店が再開した日、高額ベッドや紳士スーツのオーダーとともに、シャツや肌着もまとめ買いした人々がいる。こうした人たちは、これまでのライフスタイルを一度リセットし、新生活のための消費に動いているように思える。一方には雇用や収入への不安から節約せざるを得ない人もいるのだが。
個々に描く新生活は所得や嗜好(しこう)などによって異なる。新生活を想定した需要の中身はこれから一層明確になってくるだろう。かねてから言われている消費の多様化だが、「コロナ禍」により、それがどう変化しているのかも見極めていくことが重要だ。今の購買行動はこの後、「生活を楽しむ段階」に戻った時にも消費の根底に残る気がする。