《めてみみ》陣僧

2020/06/03 06:24 更新


 テレワークの在宅勤務となり、自然とテレビを見る時間も長くなってしまった。ドラマや紀行物など様々な収録ができなくなったことで、番組編成も様変わりした。NHKの大河ドラマも一時休止。織田信長が台頭した桶狭間の戦いをはじめ、戦国のクライマックスが近づいていただけに、水を差された感がある。

 室町時代から戦国時代にかけ、大きな戦いが起こる戦場には「陣僧」と呼ばれる僧侶の一群がいた。敵味方の区別無く戦死者を弔うのが大きな仕事だが、時には和議を勧めるために、双方を行き来しながら仲介者の役目も果たす。中立の立場にあるため、自然条件や戦場の配置などを客観的に見られ、戦いの前に勝敗を見極めるような僧もいたらしい。

 今週から、通常の勤務形態に戻った企業も多いはず。2カ月余りの自粛期間を経て、仕事上の様々な気づきを生かして奮闘し、新しいビジネスを立ち上げる人々も増えることだろう。第2波の流行を警戒しつつも、とりあえずは経済が回り始める。

 これまで企業が前提としていた社会、経済の環境が大きく変わる。企画・生産・販売・財務・人の採用など、全ての部署が変化に対応していかねばならない。ウイルスとの戦い、あるいは共存のなかで、時代をどう切り開くか。陣僧のように、冷静で客観的な判断が何より求められる。



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