《めてみみ》賞味期限切れ

2020/05/22 06:24 更新


 田畑が残る郊外でテレワークをしていると、これまで目に入ってこなかった季節の移り変わりを実感する。5月も半ばを過ぎると田んぼは水張りされ、まもなく田植えとなる。初夏の気持ちの良い空にはツバメが元気に舞っている。世界を襲うパンデミック(感染爆発)とは無縁のような静けさだ。

 外出自粛を続けるうちに、確実に季節は変わり、春は過ぎ去っていった。暦の上では立夏も過ぎた。今年買った春物の服は、ほとんど外で着る機会もないうちに衣替えを迎えそうだ。服を売る側にとっては災難である。ほとんど春物を売る機会がないまま、季節が変わろうとしている。売れ残った春物はどう処分するのだろうか。

 在庫を減らすためにセールを前倒しするといった声を聞く一方で、秋物の納期遅れを見越して春物をスライドさせるという考え方もあるようだ。実際にインポート商品では、イタリアの経済再開との関係で秋物の納期の見通しは不透明だ。

 こういう時期にこそ、サステイナブル(持続可能)な考え方を広げるべきだ。ほとんど売る機会のなかった春物を、そのままシーズン遅れの商品として〝賞味期限切れ〟にしてしまってよいのだろうか。ファッションは季節商品でもあるけれど、自粛生活に耐えた人々はより柔軟な発想を持てるようになった気がしてならない。



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