窮鼠(きゅうそ)が龍を噛んだ。24日の香港区議会選挙で民主派が8割以上の議席を獲得し、圧勝した。投票率は71.2%。多くの市民が投票し、香港人の民意を中国政府に示した。
香港が中国に返還されたのが97年。03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の影響で観光客が激減、香港経済が低迷した時、中国人観光客の香港への個人旅行の一部解禁や経済貿易緊密化協定などで香港経済を救ったのは中国政府だった。この頃から中国と香港の融合を意味する「中港融合」が本格化、中国の影響度が強まっていく。
一国二制度は47年まで続く。返還後20年で香港の中国化が大きく進み、「あと30年ももたない。香港は中国に飲み込まれる」と17年当時、香港人は嘆いていた。しかし今回のデモや選挙の結果で、「香港は中国の思い通りにはならない」との意思を明確に伝えた。
ただ経済の低迷は心配だ。実は民主派の得票率は57%で、親中派も41%を占めた。小選挙区制のため極端な結果が出たが、中国を支持する人は一定数いる。「経済が悪化すると職を失う。逃亡犯条例改正案の反対や、行政長官を選ぶ普通選挙を求める気持ちはわかるが、生活できなくなったら元も子もない」。ある香港人が若い人をいさめていた。どちらかが間違っているわけではない。どちらもただ一生懸命、生きているだけだ。