上海市内中心部で空き家を見掛ける機会が多くなった。上海は19世紀に租界を中心に発展してきた。大雑把に分けると、外灘から人民広場辺りを中心とした共同租界、淮海路沿いを中心としたフランス租界がある。今でも上海の中心で高層ビルや大型商業施設が立ち並ぶ市内の一等地だ。
高層ビルの合間には19世紀から20世紀初頭に建てられたビルや住宅群が今も多く残る。それが上海独自の異国情緒を醸し出していて、中国人だけでなく欧米人を中心に多くの外国人が住んでいる。
最近、日本ブランドショップが出店している新天地の周辺にも数多くの古い建物が残っている。その古い建物の窓がコンクリートで塗り固められ、立ち退きの終了した住居が目立ち始めた。外灘と新天地の間にある豫園周辺の住居でも、立ち退きが始まった。
都市は歴史とともに変化していくものだからと言われればそれまでだが。ただ、日本でもバブル時代よりバブル崩壊後の方が、都内の近代建築が多く解体され新たなビルに変わった。経済再生には設備投資が一番効果的だからだ。
上海でも多くのビルや地下鉄建設が今も進む。一等地に低層階の建物群を残すのは、効率が悪いのは理解できる。しかし日本で戦前の古い長屋で幼少期を過ごした身としては、生活感の漂う家並みが消えていくのは寂しい気がする。