《めてみみ》季節を楽しむスピード

2019/11/25 06:24 更新


 新名神高速道路を高槻ジャンクションから西に向かって走っていると、トンネルの中を緑色の光の輪が流れていく区間がある。クルマが光の輪を追い越すこともあるし、追い越されることもある。「ペースメーカーライト」というのだそうだ。

 LEDの点滅間隔を調整することで、光の輪は一定速度で流れていく。光の輪を追いかけて運転すれば、スピードの上がりやすい下り坂や、スピードが落ちて渋滞が起きやすい上り坂も、同じ速度が保てる。

 10月は気温の高い日が続き、増税後の購買意欲の減退や台風の影響もあって、冬物商戦は厳しい立ち上がりとなった。11月は中盤から気温が下がり始め、防寒衣料の動きも活発になってきた。とはいえ、例年なら本セールを前に、12月から冬物セールが段階的に始まる。プロパーで冬物が売れる期間は短い。

 梅雨が明ける前から夏物セールが始まり、本格的な寒波が到来する前に冬物セールが始まる。それに合わせて物作りも前倒しになり、素材調達から縫製、納品まで、気の抜けないスピードで駆け抜ける。

 季節を感じさせる食材や装い、季節を楽しむ行事は暮らしを豊かにする。暮らしは季節とともに進み、追い抜いたり、追い抜かれたりはしない。季節とともにあるべきアパレルビジネスは、季節を追い抜くほどスピードを出し過ぎてはいないか。



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