《めてみみ》現場を応援

2019/10/07 06:24 更新


 小学校4年生の息子の運動会を応援に行った際、地元の保護者から「(ベストショットを求めて)朝早くから場所取りする必要がなくなった」との声が聞こえてきた。ひと昔前と比べて明らかに児童の数が減り、運動場にも空きがあるからだろう。東京まで通勤圏内の住宅街でもこうした状況だ。

 先日の東北出張では、もっと深刻な現実を目の当たりにすることになった。国内では比較的労働条件が整った大きな縫製工場でも新卒採用が難しくなってきたという。その工場では、地元の高校を卒業した新人を毎年コンスタントに10人以上採用してきた。しかし、今年は一次募集で2人しか採用できなかった。近隣の高校の統廃合が進み、地元での就職を希望する高校生自体が激減している。

 夏に繊研新聞社が行った縫製業とニッターを対象としたアンケート調査でも「課題は何か」との質問に対し、「人材確保」という回答が一番多かった。「労働条件の改善」「技術継承」「受注量の増加」と続いた。

 すでに個々の工場で解決できる次元ではなくなっている。一部地域の産官学連携による人材確保・教育、縫製業のイメージ向上などが、他地域でも取り組まれることが望まれる。服作りの現場の課題解決を業界全体で応援することこそが、低迷するファッション業界の再生にもつながるはずだ。



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