《めてみみ》収益の向上とともに

2019/10/04 06:24 更新


 9月20日に開業した大丸心斎橋店本館は、売り場面積の約65%を定期賃貸借契約(定借)にした。郊外百貨店では収益性の低い上層階を定借にする傾向が続く。都心店ではレストランなどでの事例はあるが、これほど定借比率の高い店舗は初めてだろう。

 かつての百貨店は高コスト構造ながらもSCと比べて売上高効率が高かった。が、「減収⇒経費削減」のスパイラルが続き、営業赤字から脱却できずに多くの百貨店が閉鎖した。定借化は、運営コストを大幅に下げることで安定した利益を確保する。大丸松坂屋百貨店の好本達也社長は同館について「全てのフロアが黒字になる収支バランスとなり、初年度から黒字の見通し」と語る。

 大丸心斎橋店の9月売上高は前年同月比49.4%増となった。15日までが北館と南館、20日からは本館と南館の2館営業。前年は「関空閉鎖」など台風の影響があり、今年は駆け込み需要の後押しもある。評価は難しいが、家賃収入計上分の大幅増を考慮すれば「好調なスタート」と言える。

 百貨店業界は、収益性の向上、集客力の強化、新規客層の獲得などの課題を抱えている。定借化で収益性は向上するのかもしれないが、他の課題も克服してこそ「新・百貨店ビジネスモデル」だろう。特に長年の課題である「若い世代」を獲得できるかが重要な指標だ。



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