ユネスコの世界文化遺産に登録された百舌鳥(もず)・古市古墳群。その中でも国内最大の前方後円墳である大仙古墳を抱えるのが堺市だ。公共施設やショッピングセンターなどでは「祝・世界遺産登録」の看板やポスターが目立ってきた。近隣商業施設からは「これを機に自社の店舗運営だけでなく、地域おこしにも積極的に関わっていきたい」との声が上がる。
規模もさることながら、登録の大きな理由は、市街地にありながら古墳群が良好な状態で保護されていること。中には高度経済成長期に土砂の採取のため、破壊の危機を迎えた古墳を地域住民が守り抜いた例もあったという。
近年の調査では、古くから古墳と地域が共生してきたことが明らかになった。古墳周りの堀は農業用水として活用するために整備され、周辺の雑木林は、薪取りや牛馬の放牧地として使われた。その結果、樹木が良好な状態で育つ環境が維持されたようだ。
世界遺産の巨大古墳は、ピラミッドや秦の始皇帝陵が著名だ。これらと違い大仙古墳は一般公開されているわけではない。普通に現地を訪れれば、大きな森が広がっているだけと感じる人も多いはず。いかに歴史や背景、地域とのつながりという無形の価値をアピールできるかがポイントだ。好材料の少ない時代。地場産業や近隣商業施設の頑張りに期待したい。